どのようなことをすると時効の利益の放棄になるか
1 時効の利益の放棄とは
時効の利益の放棄とは、時効の完成によって利益を受ける人が、その利益を受けることを放棄することを指します。
長年借金の返済を怠っており、時効の援用を主張すれば借金の返済義務がなくなるという状況にある方でも、時効を援用するかどうかは選ぶことができますので、時効の援用をすることなくきちんと返済していきますと伝えた場合には、時効の利益の放棄をしたということになります。
2 時効の利益を放棄することができるのはいつか
時効の利益の放棄は、相手方の同意なく行うことができます。
しかし、時効期間が経過する前に、あらかじめ放棄するということはできません。
つまり、お金を借りる契約をするときに、あらかじめ時効の利益を放棄させられるようなことになってはいけないということです。
時効の利益の放棄は、時効期間が経過した後、つまり時効の援用をしようと思えばできる状態のときでなければできないということになります。
3 そのつもりがないのに時効の利益を放棄してしまうケース
上述のように、自らの意思をもって時効の利益を放棄する場合は特に問題ないと思いますが、知らず知らずのうちに時効の利益を放棄してしまうケースもあります。
これは債務の承認と呼ばれるもので、これも債務者が時効の援用をできることを知ったうえで、あえて債務の存在を認めるということであればいいのですが、その人の自覚なく行ったことが債務の承認となってしまうことがあるのです。
例えば、時効期間が経過したあとに債務の弁済を行ったり、弁済することを申し入れたりした場合、債務があることを前提にした行為を行っている以上は債務を承認しているということになり、時効の利益を放棄したものとして扱われてしまいます。
時効期間が経過している借金についても、貸金業者から請求されることはあります。
その場合、債務者が時効期間の経過に気づかず、返済することを約束してしまえば、時効の利益を放棄したことになってしまい、本来主張できた時効はもはや成立しなくなってしまうのです。
返済が滞ってから数年以上経過しているような場合に、借入先から請求が届いたのであれば、その場で返事をすることなく、いったん立ち止まり、よく考えてから応答した方がよいかもしれません。